概要
AIエンジニア・安野貴博氏が、ソフトウェアの「リファクタリング」概念を立法に適用し、AIを用いてデジタル化の障壁となる法令条文を自動抽出した結果と、法体系の保守性向上に向けた提言をまとめた論考。
詳細内容
### 法律の「保守性」とリファクタリング
ソフトウェア開発において、内部構造を整理する「リファクタリング」は不可欠です。安野氏は、積年の改正が積み重なった現代の法律にも同様の「保守性の悪化」が生じていると指摘します。特に「対面」や「書面」を前提とした古い表現(アナログ規制)がデジタル化の大きな障壁となっています。
### AIによる自動抽出の成果
従来のキーワード検索によるアナログ規制改革では、多様な法的表現を網羅できませんでした。今回、AI(Fable 5 / Claude Code)を活用し、全法令約10万条を対象に意味ベースの解析を行った結果、従来の手法では漏れていた87箇所の改正候補(行政指導の電磁的提供や戸籍法の口頭届出のオンライン化など)を抽出することに成功しました。
### 「DRY」原則と行政基本法の提言
ソフトウェアの「DRY (Don't Repeat Yourself)」原則を法律にも導入すべきと説きます。日本では「電磁的記録」の定義が343本もの法律で重複して記述されていますが、韓国の「行政基本法」のように共通の処理を「ライブラリ化」することで、法体系の保守性は劇的に向上します。
### 立法における「Mythos Moment」の到来
AIが脆弱性を数千件発見する「Mythos Moment」がセキュリティの世界で起きたように、法律の世界でもAIが不整合を一斉に掘り起こす時代が来ます。これに対応するためには、AIによる定期的な法令点検の仕組み化に加え、一括法での効率的な処理を可能にする国会改革が必要です。