掲載済み (2026-09-19号)
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重みは学習するのか、測るのか。ハエの脳が問い直すAIのつくり方

日本語

掲載情報

2026年9月19日土曜日号 アネックス掲載

概要

ショウジョウバエの全脳配線図(コネクトーム)から得られた構造を「重み」として利用する脳シミュレーションを通じ、学習に依存する現代AIと、進化による構造に情報を蓄積する生物脳の設計思想の差異を浮き彫りにする。

詳細内容

2026年に公開されたショウジョウバエの全脳配線図「MaleCNS」を背景に、脳のエミュレーションとAI設計の新たな可能性を解説した記事です。現在のLLMが膨大な計算資源を用いて「重み」を学習するのに対し、ハエの脳モデルは顕微鏡で観察されたシナプスの数をほぼそのまま重みとして使用します。Shiuら(2024)の全脳モデルは、人が調整するパラメータをわずか1つに絞りながらも、摂食回路の予測において91%の一致率を示しました。しかし、最新の研究では「配線図だけでは動的な振る舞い(ダイナミクス)を一意に決定できない」という限界も明らかになっています。また、線虫の脳でハエの体を動かす「デジタル・スフィンクス」の実験が示すように、身体側の学習が脳の機能を補完してしまうという課題も指摘されています。AIにとっての示唆は、ハエを模倣することそのものではなく、何でも学習に任せる現在の主流から、生物のように「構造」に知識や制約を持たせることで、学習コストの劇的な削減や効率的な推論を実現するアプローチへの転換にあります。