概要
CERNのLHCでは、毎秒1ペタバイトに及ぶ膨大なデータから未知の物理現象を50ナノ秒で選別するため、FPGAに最適化された極小AI(タイニーAI)が「捨てる技術」の中核を担っている。
詳細内容
### CERNにおける「極小AI」の最前線
CERNのLHC(大型ハドロン衝突型加速器)は年間4万エクサバイトものデータを生成しますが、実際に保存できるのは0.02%未満です。この「データの洪水」から価値ある衝突イベントを救い出すため、CERNは商用AIの巨大化とは対照的に、FPGAに最適化された極限まで軽量な「極小AI」を採用しています。
### 50ナノ秒の意思決定とAXOL1TL
「レベル1トリガー」と呼ばれるシステムでは、約1,000基のFPGA上で「AXOL1TL」という異常検知アルゴリズムが稼働しています。これは変分オートエンコーダ(VAE)をベースとした教師なし学習モデルで、わずか50ナノ秒で「未知の物理」の兆候を判定します。この速度を実現するため、モデルは量子化や枝刈りを経てFPGA上の固定小数点演算に最適化されています。
### 「捨てる技術」が支える科学的発見
CERNは「hls4ml」というオープンソースツールを用い、PyTorch等で学習したモデルをシリコンに直接焼き込んでいます。この「何を捨てるか」を極める技術は、新粒子「Ξcc⁺」の発見にも寄与しました。2030年の高輝度LHC計画に向け、さらに10倍に増大するデータ洪水に耐えるべく、ナノ秒単位で判断を下すエッジAIの進化が続いています。