次号掲載予定 (2025-09-27号)
#079 594文字 • 3分

AI時代のプロダクトマネージャーにエンジニアリングは必要?

概要

筆者は、AI時代においてプロダクトマネージャーは、コード記述能力よりも開発プロセスとAIの可能性を深く理解し、エンジニアが直面する課題を把握することが、ROI最大化のための意思決定に不可欠だと主張します。

詳細内容

AI時代において、プロダクトマネージャー(PM)がコードを直接書けなくとも、開発プロセスやAIの可能性を深く理解し、エンジニアの直面する課題を把握することが、プロダクトの投資対効果(ROI)を最大化するための意思決定に不可欠であると筆者は強く提唱しています。従来のPMが「何を、なぜ作るか」に注力する一方で、開発・運用コストの解像度が低いままでは、ROIを著しく悪化させるリスクがあるため、プロジェクトマネジメント的側面である「どのように、いつまでに作るか」の理解が重要です。 PMの業務において技術理解がなぜ重要なのか、具体的な場面で説明されています。例えば、MVP開発では、ユーザー価値と技術的な実現容易性を両立させる判断、機能優先順位付けにおける実装コストの正しい評価、AI機能導入の際に技術的実現可能性やROIを正確に把握することなどが挙げられます。実際に10億円を投じて実用化困難と判断された虐待判定AIの事例は、技術的知見なしにAIを組み込む危険性を浮き彫りにしています。また、開発中のリファクタリングやテスト落ち、リリース後の運用・保守コストの計画、ステークホルダーとの期待値調整においても、技術的制約や工数を肌感覚で理解していることが、的確な意思決定とコミュニケーションを可能にします。 プロダクトマネージャーが目指すべきは、エンジニアリングを「実装できる」レベルではなく、「なぜそこで時間がかかるのか」「何がボトルネックになりやすいのか」といった摩擦ポイントの構造を理解することです。そのための実践的な学習ステップとして、GitHubでプルリクエスト(PR)を立ててレビューを経験する、テストが落ちた際のデバッグを体験する、本番デプロイやDBマイグレーションの作業に触れるといった、開発プロセスを実体験することが推奨されています。CursorやClaude CodeなどのAIツールを活用し、簡単なコード修正やデータ確認を自ら試すことも、コスト感覚を養う上で有効とされます。 この視点は、ウェブアプリケーションエンジニアにとっても極めて重要です。PMが開発プロセスやAIの限界と可能性を理解することで、エンジニアはより明確な要件と現実的なスケジュールのもとで開発に集中でき、無駄な手戻りや期待値の齟齬を減らせます。結果として、チーム全体の生産性が向上し、より価値のあるプロダクト開発に繋がるでしょう。専門分野に集中しつつも他分野の基本を理解することが、真のプロフェッショナリズムであると筆者は結んでいます。