次号掲載予定 (2025-09-27号)
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世界で初めてAIでウイルスのゲノムを設計することに成功

概要

スタンフォード大学などの研究チームが、ゲノム言語モデルを用いて機能するバクテリオファージのゲノム設計に世界で初めて成功し、より複雑な生物システムの設計への道を開きました。

詳細内容

スタンフォード大学などの研究チームが、ゲノム言語モデルを用いて機能するバクテリオファージのゲノム設計に世界で初めて成功しました。これは、単一の遺伝子やタンパク質といった個別要素ではなく、複数の遺伝子や制御領域が複雑に相互作用する「ゲノム全体」の設計をAIが手掛けた、極めて画期的な成果です。研究では、バクテリオファージを含む200万種類以上のウイルスゲノムで事前学習された「Evo 1」と「Evo 2」というモデルが、さらに約1万5000種類の特定バクテリオファージゲノムで追加学習されました。このAIが生成した数千のゲノム配列を評価し合成した結果、16種類の生存可能なファージが作成され、中には野生型よりも高い増殖適応度や、薬剤耐性大腸菌の増殖を抑制する能力を持つものが確認されています。 この成果は、私たちウェブアプリケーションエンジニアにとって、生成AIの可能性がテキストやコード生成といった既知の領域をはるかに超え、生物学的なゲノムのような極めて複雑で構造化された「言語」の理解と生成にまで及んでいることを明確に示唆します。AIが生命の設計図の「文法」と「意味」を学習し、新規で機能的なシステムを創出できるという事実は、将来的には複雑なソフトウェアアーキテクチャの設計、あるいは自律的に動作するエージェントシステムの構築におけるAIの役割を再定義する可能性を秘めています。膨大なデータで事前学習し、特定のタスク向けにファインチューニングするというプロセスは、我々が日常的に扱う大規模言語モデルの開発と共通するパラダイムであり、AIが様々なドメインの「言語」を理解し、創造的な設計を行う能力が普遍的であることを示しています。また、AIの設計能力の向上は、同時に重要なバイオセーフティ上の考慮を必要とするという指摘は、コード生成を含むあらゆる強力な生成AIシステムの開発と導入において、常に倫理的・安全保障的側面を念頭に置くべきであるという、普遍的な教訓を与えています。この研究は、AIが単なるツールを超え、複雑なシステムの共同設計者となる未来への一歩と言えるでしょう。