掲載済み (2025-08-23号)
#077 597文字 • 3分

## gpt-ossモデルのサービングにおけるリクエスト処理性能評価 ― NVIDIA H100・A100・L4の比較

掲載情報

概要

https://rand.pepabo.com/article/2025/08/18/gpt-oss/

詳細内容

## gpt-ossモデルのサービングにおけるリクエスト処理性能評価 ― NVIDIA H100・A100・L4の比較 https://rand.pepabo.com/article/2025/08/18/gpt-oss/ ペパボ研究所が、NVIDIA製GPU(H100、A100、L4)におけるOpenAIのgpt-ossモデルのサービング性能を詳細に評価し、実運用での最適なGPU選定と設定指針を提示しました。 **Content Type**: 🔬 Research **Scores**: Signal:5/5 | Depth:5/5 | Unique:4/5 | Practical:5/5 | Anti-Hype:4/5 **Main Journal**: 93/100 | **Annex Potential**: 91/100 | **Overall**: 92/100 **Topics**: [[LLM推論性能, GPU選定, LLMサービング, vLLM, モデルパラメータチューニング]] OpenAIがオープンウェイトモデル「gpt-oss」を公開し、その軽量性と既存モデルに匹敵する性能から、AI施策のコスト削減や適用範囲拡大への期待が高まっています。しかし、ウェブアプリケーションにAIを組み込む際、モデルの出力精度だけでなく、サービス環境でのリクエスト処理性能は極めて重要な要素です。ペパボ研究所は、この実用的な課題に対し、NVIDIA H100、A100、L4という主要なGPU環境でgpt-ossモデルのサービング性能を徹底的に評価し、具体的な導入指針を提示しました。 本評価は、GPU種別、モデルサイズ(gpt-oss-20b/120b)、入力トークン数、Reasoning effort(推論の複雑度指定)、並列リクエスト数といった多様な要素が処理性能に与える影響を包括的に分析しています。特に、vLLMのような高速推論ライブラリとLocustを用いた負荷試験という、実践的な測定環境が採用されている点が注目されます。これにより、単なる理論値ではなく、実際のサービス運用に近い条件でのデータが得られています。 H100環境での評価では、vLLMの並列処理機構が低〜中程度の負荷で効果的に機能し、スループットが向上することが確認されました。しかし、Reasoning effortの設定を「high」にすると、モデル内部の推論負荷が増大し、レスポンス時間が顕著に増加、並列化による恩恵が打ち消されやすくなる傾向が見られました。これは、高精度を追求するほど推論コストが増すというトレードオフを明確に示しています。また、gpt-oss-120bは20bより応答時間は長いものの、モデル規模の拡大に比べて性能低下は緩やかであり、入力トークン数の影響は比較的小さいことも判明しました。 重要な示唆として、リクエスト処理性能が出力トークン数に強く依存することが改めて明らかにされました。レスポンス時間の安定化には、最大出力長の適切な制御が非常に有効です。具体的には、応答性能と推論精度を両立させるためには、小さいモデルでReasoning effortを「high」にするよりも、大きいモデルで「medium」を設定するか、または出力長を制限する方が実用的であると結論付けられています。 一方、A100やL4といった一世代前のGPUでもgpt-ossモデルの推論は可能ですが、H100と比較して大幅に応答時間が長く、大規模な並列処理や本番サービス環境での安定運用には適さないという現実的な結果が示されました。この研究は、gpt-ossを実サービスに導入するウェブアプリケーションエンジニアにとって、H100以上の高性能GPUが推奨されること、そしてReasoning effortや出力トークン数のチューニングがコストパフォーマンスとユーザー体験を最適化する上で不可欠であるという、根拠に基づいた意思決定を可能にする貴重な情報源となるでしょう。